yukino_halu’s diary

日常の雑記。

がん-4000年の歴史- シッダールタ・ムカジー

『病の皇帝「がん」に挑む』の改題で、原題が THE EMPEROR OF ALL MALADIES : A Biography of Cancer 。

上下巻で1冊が500ページ程度。とはいえ引用文献や索引等があるので、本文は上下巻合わせて800ページくらい。久しぶりにページ数が多いものを読んで少々疲れた。と言いつつ、ガンがなぜできるのかどう治療したらいいのか全くわからない時代から、現代の手術・化学療法・放射線治療までの流れを面白く読めた。

著者の担当する患者が出てきたり、ガンの種類や治療法によって時代が多少前後したりして、歴史や時代背景の認識が緩い私としては少々手間取ることもあった。それでも途中で投げ出す気にはならずに最後まで読めたのは、著者と訳者の力量だと思う。日常生活では使わない単語が出てくるけれど下巻の巻末に用語集のようなものもあるし、仮にそれを読まなくても全体の理解に不都合がないように書かれている。

乳ガンではかつて根治手術として、乳房やリンパ節だけでなく周辺の筋肉や骨までごっそり除去していた、ということは何かで見聞きして知っていた。抗がん剤も徐々に進化してきて、副作用が少ないものができていること等も知識としては知っていた。

ただ、知識で知っていたことと、こうして一つの物語(?)として読むのとでは重みが違う。改めて「医学の進歩は多数の患者(治験者)の元に成り立つ」ことを認識した。あとは「ガン」として様々な臓器の癌をひとまとめにして語ることの利点と欠点。

バラバラに不確かな精度で持っていた知識をまとめてくれた、いい本だった。