yukino_halu’s diary

日常の雑記。

自分ごとの政治学 中島岳志

NHK出版の「学びのきほん」シリーズ。

100ページ程度の薄い本で、文字も大きいからあっという間に読める。

4つの章立てで、政治学の基本概念、政治の「考え方」とは、「自分ごと」を過去に学ぶ、死者と日常の政治学

政治は左翼と右翼、保守とリベラル、などと対立する区分で語られることが多い。しかし著者はその区分自体が古すぎて実態に合わないと言う。リスクの個人化とリスクの社会化、パターナルとリベラルの軸を提起していて、なるほどと思った。

今の日本は社会保障を縮小する自己責任社会へ向かっている、目先のことだけではなく過去や未来を見つめて生き方(=政治)を考えよう、など何となく感じていたことを言語化してくれた内容。

ニュース等では政治家も国民も「減税が正義」と思考停止したみたいに言うけれど、税金(=国や地方の収入)がなければ社会保障も実現できない。医療費の3割負担も教育の無償化も、失業手当も職業訓練生活保護も、道路や水道の整備や災害復旧その他諸々、全て税金があってこそ。税収が少なくなって、非正規雇用で不安を抱えながら最低賃金で働く公務員が増えているけれど、そんな状況で質の高い行政サービスを提供し続けることができるだろうか。

政治は自分のためや現在のためだけにあるわけではない。先人の営みの上にあって子孫の下敷きになるもの。正の遺産も負の遺産も引き継いで、現在がある。負の遺産を少しでも減らして未来へ渡すことが、今を生きる私(たち)の役割だろう。