yukino_halu’s diary

日常の雑記。

古代日本の官僚 虎尾達哉

古代日本の官僚 天皇に仕えた怠惰な面々 虎尾達哉

飛鳥・奈良・平安時代の官僚について、様々な史料を元に実態に迫る。

章立ては、律令官人とは何か、儀式を無断欠席する官人、職務を放棄する官人、古来勤勉ではなかった官人たち、官人たちを守る人事官庁、官僚に優しかった「専制君主国家」。この本で扱う官人とは、主に下級官僚。

何年も前にニュースで「勤怠表が出土し、この人物はかなり怠け者だったらしい」と見聞きした記憶が蘇った。あとは平安文学等で出てくる物忌(ものいみ)や方違(かたたがえ)など。物忌や方違が口実のズル休みは当然あっただろうし、有力貴族(上司)がそうなら部下(下級貴族等)だって同じようなものだろう。

…と思いながら読んでいたが、思った以上にサボっていた。そして天皇もそれを見逃していた(見逃さざるを得なかった)。「元日の朝から(新年の儀式のために天皇が)臣下が来るのを待っていたら(全然来なくて儀式ができないまま)日が暮れた」なんていう記述は流石に同情したくなる。

現代の「天皇をありがたがる国民性」は、明治以降に天皇が各地を行幸して「国家元首はこの私だ」と宣伝して回った結果。上意下達や勤勉や滅私奉公は、江戸時代に広まった儒教の考え方。ということを踏まえれば「天皇?仕事のルール?なにそれ美味しいの?」といった思考の人々が多くても何の不思議もない。

ふと、源氏物語を思い出した。桐壺帝と光源氏は、実の親子。桐壺帝の寵愛を受けている藤壺の女御と光源氏が密通しても、桐壺帝は咎めないしそれによって生まれた不義の子(桐壺帝の十番目の皇子)が帝(冷泉帝)になったりする。天皇たちは色々と諦めていて、お飾りに徹していたのかもしれない。少なくとも、紫式部から見た天皇はそういう存在だったのではないか。なんてことも考えた。

 

ネガティブ・ケイパビリティ 帚木蓬生

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 帚木蓬生

精神科医の著者がネガティブ・ケイパビリティという言葉を知った経緯や、ポジティブ・ケイパビリティとの違い、医療・創造・教育・寛容におけるネガティブ・ケイパビリティについて。

現代では、とにかく正解を答えを結論を、早く早くと求めがち。スマホなど情報機器が発達して矢継ぎ早に多くの情報が入ってくるようになって、その傾向が強くなっているようにも思う。

この本によれば「早く答えを」というのは生物が生き延びる上で必要な能力らしい。確かに敵か否かは瞬時に判断しないと命に関わる。

とはいえ、根拠の乏しい中で性急に出した判断には、思い込みもあったりして間違いも多い。世の中はすぐに答えが出ることばかりじゃない。現実世界は、不確かで曖昧でモヤモヤするような状況がほとんど。

…とはいえ、地球温暖化対策や核兵器廃絶、プラスチック汚染や環境破壊など、先延ばしにしていたら手遅れになりそうなものも多いけど。

私たちは税金下げろ・福祉等の補償を手厚く、などの卑近なことは即断即決即効性を求めるけど、温暖化対策としての省エネなどすぐに効果が出ないことには無関心。温暖化で異常気象が増えてるね〜と言いながら、長袖を着て冷房、半袖を着て暖房。食べきれない食品を入手して捨てる、なんとなく色々と買ってどんどん捨てる。製造・水処理・ゴミ処理にエネルギーが使われることには思いが至らない。

人間は脳が発達し、現在だけでなく過去や未来を考えられるようになった。それでも基本的には、たった今目の前にあることにしか注意を向けられないんだろう。意識して広い視野を持とうとしない限り。

 

発症直後にやった方が良いと思ったこと

注意:化学物質過敏症は、人によって「何に反応するか、どのように反応するか」が違います。したがって、この記事の内容はあくまでも雪野ハル個人の経験によるものです。万人に有効な対策ではありません。

 

今後、症状が悪化して思考力が低下した時のためにメモ。目処がつくまではストイックに。

何はともあれ、寝室・寝具・パジャマの安全を確保。体力気力も回復も、マトモな睡眠があってこそ。

自宅内で長時間過ごす場所・部屋着の安全を確保。安全な場所や時間を増やすことで回復を図る。

自分の身体の声に耳を傾ける疲労・眠気・空腹満腹・忌避感…体調が少しでも上向いてくるまでは、無理は厳禁。安全確保以外は頑張らない。ただし身体からの真の要求と、これまでの経験による欲望や惰性とを区別する。

洗濯・掃除・入浴・排泄によって、家も身体も汚染物質を排除する。

 

安全確保のため、パジャマと部屋着と外出着は完全に分ける。少なくともパジャマは就寝時のみの着用とし、絶対に汚染させない。

身体が嫌がるもの・違和感を訴えるものは、体調悪化の一因なのが明白なので、基本的には捨てる。どうしても残したいなら隔離する。

冷蔵庫内がマイクロカプセル臭で汚染されていれば、中身を全て出してクエン酸で拭く。効果は低いけどやらないよりはマシ。

洗えるものは洗う。洗濯の際は汚染を避けるため、寝具とパジャマ、部屋着、外出着に分けて行い、一緒に洗わない。汚染防止の観点から、室内干しの方が良い。

徹底的な掃除。天井・壁・床・家具等を水拭き。雑巾をたくさん用意してマメに交換する。

食材は完全無農薬の野菜を中心にし、タンパク質も忘れずに摂る。味付けは塩のみとし、調味料による不調を避ける。

以下の物が、万が一自宅にあれば排除する。合成洗剤、柔軟剤、芳香剤、シャンプー類、スプレー缶、カフェイン、アルコール、除草剤殺虫剤等の農薬類、ポリウレタンを含む衣料等。

 

 

仮病の見抜きかた 國松淳和

金原出版から出ていて、本書によるとこの出版社は医学書専門の会社らしい。

医師でもある著者が、短編小説の形をとって10症例を書き、かつ医学的ポイントを解説的に書いている。形式としては各短編小説のど真ん中に解説が挟まれていて、小説としても読み物としても不思議な感じ。

本のタイトルは「仮病の見抜きかた」だけど、通底するメッセージは「仮病だと決めつけるな」だと思う。あとは「病名にこだわるな」とか「『心因性』とは精神病や気のせいという訳じゃない」。

私は医療従事者ではないので病態については解説的な部分を読んでも表面的なことしかわからなかった。一方で、医療従事者の心のうちや思考回路を、ちょっと垣間見られた気がした。なんといっても医療者本人が書いているものだし。医者だって聖人君子でも超人でもなくただの人。日々更新されていく医学的知識を仕入れながら、目の前の患者や疾患に自分の精一杯で対応している。

 

 

 

これからの「正義」の話をしよう マイケル・サンデル

これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学 マイケル・サンデル 

2010年発行。原題はJUSTICE What's the Right Thing to Do? で、著者はNHK教育でも放送された「ハーバード白熱教室」の教授。番組は1回くらいは見たような気がする。

正しいこと、功利主義リバタリアニズム自由至上主義)、市場と道徳、イマヌエル・カント、ジョン・ロールズアファーマティブ・アクション積極的差別是正措置)、アリストテレス、忠誠のジレンマ、正義と共通善。

扱われる題材は、道徳的ジレンマや実際のニュースなど。瞬間的には「こっちが正しい、こういう判断が適切だ」という思考が立ち上がる。しかし改めて冷静に立場や見方を変えると、何が正しいのか何を根拠に考えれば良いのかがわからなくなる。自己中心的な考えは否定されがちだけど、自分を常に除外して考えることは本当に正しいのか?100人中99人が幸せになるためなら1人を犠牲にしても良いのか?代理出産で貧困国の女性の子宮を賃借することは許されるのか?など。

学校教育と違い、実生活では白黒ハッキリせずに正解のないことが多い。自分の損得やなんとなく、ではなく他人に説明できるような、他人も理解できるような判断基準を持つことの重要性を再認した。他人を説得して自分に利するためではなく、建設的な対話を通して互いにより良く生きるために。

 

 

医者と病院をうまく使い倒す34の心得 山本健人

医者と病院をうまく使い倒す34の心得ー人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方ー 山本健人

 

目次からざっくりまとめると、検査・受診・薬のQ&A、医者とのコミニュケーション、医者からのアドバイス。医療資源は有限だし、みんなでうまく有効に使おう、といった内容。

ありがちだな、と思ったのが「定期的に通院しているのに、つい最近別の病気が見つかった。もっと早く見つけられたよね?」という問い。答えは「医者は原則として『通院対象の病気』以外は診ない」というもの。毎回の受診は『通院対象の病気』の経過や変化を見るため。全身をチェック検査することが目的じゃないから、別の病気が隠れていても医者は気づかない。自分の体の変化は自分で確認する、もしくは人間ドックを受けるなどして状態を把握することが基本。医者に「自分を丸投げ」したつもりになっている患者は多そう。

「風邪に抗生物質は不要」とわざわざ書かれているということは、未だに患者には浸透していなくて欲しがる人が多いのだろう。風邪の原因はウイルスで、抗生物質は菌を殺すものであってウイルスには効かない。不要な抗生物質を飲むと薬剤耐性菌が生まれる原因になってしまい、かえって将来の自分にとって悪影響を生む。…薬に過大な期待を抱いている人も多い気がする。薬はあくまでも補助であり、病気になったら「今までの暮らし」を見つめ直すことも必要。暴飲暴食や不規則な生活リズム、喫煙や運動不足など、不健康な生活を改めずに薬を飲んでも効果は限定的。あくまでも自分を責めるのではなく、改善できることを探す。

あと、受診時に忘れがちだな、と思ったのは服装。お腹を見せるとか、体の張りを触診されたりとか、部分的に体を露出することもあり得る。きつい補正下着や脱ぎ着に手間取るスーツのような服、首を観察しにくいタートルネックやお腹だけを出すことができないワンピースなど、避けた方が良い服がある。

哲学マップ 貫成人

新書なので、分量は少なめ。14章中で東洋思想は1章分のみ。現代社会は西洋的な思想が幅を利かせているから、西洋思想に重きを置いた構成なのは当然か。

古代から現代まで、西洋哲学の流れが書かれている。人とは世界とは生きるとは宇宙とは何か。自然を見つめる眼差しも交えつつ、根源を探ろうとするところから古代の哲学が始まる。そしてその時代ごとの思想の潮流や世界観等を踏まえて、全体から個へ、本質、現象、実存…と思考が積み重ねられていく。当たり前だけれど、登場人物が多すぎて誰が誰だかわからなくなる。

世界史の教科書で見かけた名前や、どこかで誰かに聞いた名前もあったけれど、2回読んでも「哲学について」わかったようなわからないような。多少なりとも理解しようと思ったら、時代や主義で哲学を切り取った本を、何冊か読むしかないのだろう。

欧米を中心とした世界観を受け入れて育ってきたと思っていたけれど、インド哲学・仏教・道教などの思考の方が受け入れやすい感覚がある。自分のことが一番わからない。