yukino_halu’s diary

日常の雑記。

在宅無限大 村上靖彦

在宅無限大 訪問看護師がみた生と死 村上靖彦

 

「ケアをひらく」というシリーズ商品の一つ、らしい。著者は本書の中で何度か「私はもともと哲学者だった」と書いていて、略歴には精神分析学博士とある。哲学から医療に興味を持ったのだろうか。

訪問看護師にインタビューしたものを元にして、在宅看護を考える本。と言っても本書の主人公(?)は死にゆく人ではなく訪問看護師を中心とした周囲の人々がメインになっている感じ。看護師への聞き取りを基にしているんだから当たり前か。

読む前は、老人の介護から看取りにかけて書かれているのだと思っていた。が、例えば若くしてガンになって幼い子供を残して逝く人や、重症心身障害児の在宅看護についても書かれていて、私の「世界の捉え方」が狭いことを突きつけられた。

これまで私が目にしたことのある看護師といえば、風邪をひいた時などに診察室まわりで熱や血圧を測ったり採血したりなど。過去に一度だけ入院した時のことを思い出しても、そういう「私の体から道具を使って情報を取り出す人」といった印象ばかりが浮かぶ。

この本に登場する看護師の語りを読んで、患者や家族とのコミニュケーションを通じて得られる(意識・無意識を問わず)さまざまな情報を元に、個別事例に合わせた、陳腐な言い方をするならオーダーメイドの看護が成り立っていることを知った。当たり前だけど、看護師だって一人の人間。看護技術は持ってて当然だが、患者との向き合い方には個性があるし、相性が合えば、合わなかったとしても双方が歩み寄れれば、在宅看護が快適なものになる。

細かいことを言えば、文中に割と出てくる「ハイデガー(1889-1976ドイツの哲学者)」が邪魔くさかった。哲学者だった著者としては引用したくなる人物なのかもしれないけど…。昔の西洋哲学(キリスト教思想の影響を免れない)の思考と、現代日本人の感覚(基本は神道や仏教のごった煮)を関連付けようとするのが煩わしかった。