yukino_halu’s diary

日常の雑記。

オキシテトラサイクリン

薬登録情報提供システムに載っている「成分」を取り上げてみる。とりあえず飽きるまで。感想なんかは灰色文字で。

オキシテトラサイクリン(OTC

オキシテトラサイクリン(OTC)、クロルテトラサイクリン(CTC)、テトラサイクリン(TC)は、テトラサイクリン系の広域スペクトラム抗生物質である。OTCはグラム陽性および陰性菌、マイコプラズマなど広範囲に抗菌作用を示す。微生物のタンパク質生合成を阻害することにより、殺菌作用を示すと考えられている。

微生物のタンパク質生合成を阻害、ということは、微生物以外の生物のタンパク質生合成は阻害しないということ??本当に?

f:id:yukino_halu:20211224152847p:plainテトラサイクリンに-OHがついたものがオキシテトラサイクリン、-Clがついたものがクロルテトラサイクリン。しばらくどこが違うのか、間違い探しをしてしまった。

日本では動物用医薬品として牛、豚、鶏、魚類等を対象にOTCやCTCの塩類等の注射剤等が承認されている。またヒト用医薬品として、OTC塩酸塩及びTC塩酸塩の外用剤、経口投与剤等が使用されている。農薬としては、OTCがグラム陽性及び陰性菌、マイコプラズマなど広範囲に抗菌作用を示すことが明らかとされ、日本において1957 年に初回登録されている。

耐性菌の懸念から家畜の飼料にテトラサイクリン系を添加することは令和元年(2020年)12月に禁止されたけれど、魚類の餌に添加することは禁止されていない。餌から溶出したり食べこぼした餌が水中に拡散するのだから、耐性菌の懸念は魚類であっても同じだと思うけれど。尿や糞として排出されやすくて家畜に注射したものも7-8割が糞尿と一緒に出る。魚が餌として食べても同様だろう。投与したもののほとんどは環境中に出ていく。というか、農薬だって環境中にばら撒くのだから、いつ耐性菌が現れてもおかしくない。

みつばちを用いた塩酸OTCの経口投与試験(最大 1000 mg(力価)/巣)が実施された。最終投与 42-62 日後に採蜜され、OTCのはちみつ中残留濃度を測定した。残留濃度は 0.05-0.25mg/1kg(n=7)であった。

ハチミツが農薬に汚染されていると聞いたことがあったし、実際にハチミツから変な空気を感じたこともある。農薬が付いた花から蜜を集めた場合は、当然ハチミツに移行する。

小麦、エンドウ、クローバー、トウモロコシ及びきゅうりの水耕液又は苗床用砂から OTC塩酸塩を吸収させ、植物体内移行について検討された。OTC塩酸塩は小麦、エンドウ、クローバー及びトウモロコシにおいて根から吸収され茎及び葉への移行が認められたが、きゅうりにおいては葉への移行は認められなかった。

子実とか、食用部分について調べていないのは何故だろう?

OTCを分析対象とした土壌残留試験で、推定半減期は1-2週間。

ヒトの OTC の使用による多様な毒性及び刺激作用が報告されている。OTC は胃腸障害を引き起こす可能性がある。長期投与では、末梢血に変化がみられる場合がある。光毒性反応が起こる可能性があり、しばしば爪甲離床症及び爪の色素沈着を伴う。肝障害及び血液凝固不全も起こる。7 歳以下の子どもで歯の褐色化が起こる場合がある。母親が妊娠中に OTC 投与治療を受けた幼児に歯の褐色化が進む可能性もある。胎児や子どもの骨に OTC が沈着し、骨の成長が低下することがあるが OTC への暴露期間が短いと容易に回復する。

TC を投与すると、腸内細菌叢が撹乱されて細菌叢による酵素活性が変化し、他の服用薬の効果を増強・減少させることによって、副作用を起こしたり薬効が得られなかったりすることがある。通常、投与を中止して数日以内に正常な腸内細菌叢が修復される。

JECFA では、1968 年に OTC、CTC 及び TC がグループとして評価され、暫定的 ADI(0.15 mg/kg 体重/日)が設定された。1990 年のOTC 再評価で、ヒトボランティアの試験における腸内細菌叢に及ぼす影響から得られたNOAEL(2 mg/ヒト/日)に安全係数10を適用しADI(0.003 mg/kg 体重/日)が設定された。1995 年、OTC、CTC 及び TC の抗菌活性が同様であることを考慮し、OTC、CTC 及び TC の ADI として 0.003 mg/kg 体重/日(単独又は和として)が設定された。1998 年には、ケモスタットシステムを用いた試験の結果、安全係数は不要であると判断されてADI が見直され、OTC、CTC及びTCのADI として 0.03 mg/kg 体重/日(単独又は和として)が設定されている。

JECFA:FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA, Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)。国連食糧農業機関FAO)と世界保健機関WHO)の下にある科学専門家委員会

ADI:一日摂取許容量(Acceptable Daily Intake)。ある特定の物質について、一生涯、毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量。NOAELを安全係数で除すことが多い。

NOAEL:無毒性量No observable adverse effect level)。悪影響が認められない物質の最大の濃度や量であり、それを越えると悪影響が生じる濃度や量。

毒性学的 ADI : 各種毒性試験において、投与の影響がみられた最も低い用量は、ラットを用いたOTCの発生毒性試験における胎児の前肢の骨化低下及び胚吸収増加がみられた 48 mg/kg 体重/day であり、最も小さいNOAEL はラットを用いた OTC の 2 世代生殖毒性試験の NOAEL 18mg/kg 体重/day であった。

微生物学的 ADI :微生物学的影響については、ヒトボランティアへの OTC の投与試験において、NOAEL(2 mg/ヒト/day)が得られた。JECFA 及び過去の日本での評価と同様に、本委員会としても安全係数を適用する必要はないと判断した。したがって、微生物学的 ADI は、ヒトボランティアへの OTC の投与試験から得られた NOAEL 2mg/ヒト/day(0.03 mg/kg体重/day)を基に、0.03mg/kg 体重/day と設定するのが適当であると考えられ た。

ADI の設定:微生物学的 ADI は、各種毒性試験に対しても十分な安全域が得られていると考えられることから、OTC、CTC 及び TC の ADI は、 微生物学的 ADI の 0.03mg/kg体重/day(OTC、CTC 及び TC の単独又は和として)とすることが適当であると判断された。

EMEA では、OTC、CTC 及び TC の抗菌活性が同様であることを考慮し、JECFA(1995年)の評価を支持し、OTC、CTC及びTCのグループ ADIとし て 0.003 mg/kg 体重/日が設定されている(1995 年)。

EMEA:1995年に設立された欧州医薬品審査庁(European Agency for the Evaluation of Medicinal Products)。2004年にEMA(欧州医薬品庁European Medicines Agency))に名称変更。