yukino_halu’s diary

日常の雑記。

真理の探究 佐々木閑 + 大栗博司

真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話 佐々木閑 + 大栗博司

  序 心のフィルターを外す営み 佐々木閑

  第一部 宇宙の姿はどこまで分かったか 大栗博司 / 聞き手 佐々木閑

  第二部 生きることはなぜ「苦」なのか 佐々木閑 / 聞き手 大栗博司

  第三部 「よく生きる」とはどういうことか 佐々木閑 × 大栗博司

  特別講義1 「万物の理論」に挑む 大栗博司

  特別講義2 大乗仏教の起源に迫る 佐々木閑

  あとがき

 

仏教学者と物理学者、2人の公開講座を元にした本。講座の雰囲気を残すためか、会話調の文体で読みやすい。精神世界からの真理の探究と、物質世界からの真理の探究。相反しそうだけど探究者の姿勢や根底の思想は同じで、不思議な気持ちよさがあった。略歴を見ると、佐々木氏は工業化学科と哲学科仏教学専攻を卒業されている。大栗氏の専門は素粒子論だそうで、本書の内容からすると超弦理論をメインに用いているのだろう。

科学は、人間や地球が中心であるという思い込みからの脱却で進展してきた。目に見える世界の範囲を、マクロにもミクロにもどんどん拡げ、真理・因果律を理解しようと研究が進められている。物理分野ではマクロに相対性理論、ミクロに量子力学があり、それを統一する理論として期待されているのが超弦理論

人が感じる苦しみは、自分を中心としてしか物事を捉えられないことから生じている。仏陀の教えは「全知全能の神は居ない、世界を動かす絶対法則がある、不滅のものはない」ことを前提として、世界を正しく見ることができていないから生きることが苦しい、精神の鍛錬によって自分で自分の煩悩(苦しみの元)を消そう、というもの。精神の鍛錬と言っても気合や根性では無く、世界を正しく見る訓練を重ねることで煩悩が生まれないようにする事を目指す。

仏陀の教えも物理学も、身近なはずだけど遠い存在。薄い本1冊で理解できることには限りがあるし、チラッと覗き見ることができた程度。だけどこの本で得られる本質は仏教や物理の理解ではなく、生き方の指針のような気がした。指針というか指針の見つけ方。