yukino_halu’s diary

日常の雑記。

アクリナトリン

農薬登録情報提供システムに載っている「成分」を一つずつ紐解いてみる。とりあえず飽きるまで。

気になったもの等をピックアップ。感想なんかは灰色文字で。

 

アクリナトリン

ピレスロイド系殺虫剤。神経軸索におけるナトリウムイオンチャネルに作用し、神経系の伝達を遮断することにより殺虫効果を示すと考えられている。即効性と残効性に優れる。

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ピレスロイドというのは除虫菊に含まれる成分で、これと同じ構造を含むものをピレスロイド系と言うらしい。神経軸索のナトリウムイオンチャネルって、ほぼ全ての生物で似たような構造をしているだろうから、昆虫以外でも神経系に何らかの影響はあるよな。

適用の範囲や使用法の全てを書いても仕方ないので、対象作物を以下に列記する。虫は省略。

りんご なし かき もも ネクタリン 小粒核果類 おうとう ぶどう いちじく マンゴー すいか メロン いちご きゅうり なす トマト ミニトマト アスパラガス パセリ しそ科葉菜類 ピーマン とうがらし類 食用ぎく 茶 

食品安全委員会あて意見を求めたアクリナトリンに係る食品健康影響評価は、

(1)ADI(一日摂取許容量。これくらい摂取しても大丈夫だろう、という量)

無毒性量:1.61 mg/kg 体重/day (動物種) 雄ラット (投与方法) 混餌  (試験の種類)慢性毒性/発がん性併合試験  (期間) 2 年間 安全係数:100
ADI:0.016 mg/kg 体重/day

オスのラットに、アクリナトリンを餌に混ぜて2年間与え、慢性毒性と発がん性について調べたところ、一日に体重1kgあたり1.61mgのアクリナトリンを与えても悪影響が見られなかった。安全面で余裕を見るため、人間に対しては100分の1である0.016 mg/kg 体重/day(一日あたり体重1kgにつきアクリナトリン0.016 mgまでは安全だろう)を採用する。

ラットを用いた2 年間慢性毒性/発がん性併合試験において、雌で良性の卵巣顆粒膜・莢膜細胞腫の発生頻度の増加が認められたが、腫瘍の発生機序は遺伝毒性によるものとは考え難く、評価に当たり閾値を設定することは可能であると考えられた。

遺伝毒性:DNA(遺伝子や染色体)に変異を起こして悪影響(がん化)をもたらす性質

ラットのメスでは卵巣顆粒膜・莢膜細胞腫になりやすくなったみたいだけど、この腫瘍ができるメカニズムは既に解明されていて、アクリナトリンが原因とは考えられないと言っている?アクリナトリンの影響ではないという根拠が見当たらないけど何だろう?

(参考)チャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO)を用いた染色体異常試験において代謝活性化系存在下で弱陽性であったが、in vivo 小核試験では陰性であり、アクリナトリンは生体において問題となる遺伝毒性はないものと考えられた。

シャーレでハムスター卵巣由来細胞を使って代謝活性化系で実験したら染色体異常がちょっと起こったけど、生物そのものを用いた実験(餌で与えたとか?)では染色体異常は見られなかった。…生体を用いた実験では卵巣じゃなく大腿骨の骨髄細胞を観察している。なぜ?

(2)ARfD(急性参照容量。ヒトがある物質を24時間、またはそれより短時間に経口摂取した場合に、健康に悪影響を示さないと推定される一日当たりの摂取量)
無毒性量:3 mg/kg 体重 (動物種) ラット  (投与方法) 強制経口  (試験の種類)急性神経毒性試験 安全係数:100

ARfD:0.03 mg/kg 体重

ADIもARfDもラットを元にしている。ラットの寿命は2-3年。ヒトは恐らくは毎日何種類もの農薬を摂取している。安全係数は100で良いんだろうか?

(3)1 長期曝露評価

1 日当たり摂取する農薬等の量の ADI に対する比は、以下のとおりである。注)各食品の平均摂取量は、平成 17 年~19 年度の食品摂取頻度・摂取 量調査の特別集計業務報告書による。ADI(0.016 mg/kg 体重/day)を100とした場合、実際に摂取すると思われるアクリナトリンの量を%値で表記。計算式は(食品摂取量×残留農薬基準値÷体重÷day)÷ADI×100 ということ?

国民全体(1 歳以上) 42.5 (アクリナトリン摂取量は0.0068 mg/kg 体重/dayと推定)

幼小児(1~6 歳) 65.5 (アクリナトリン摂取量は0.01048 mg/kg 体重/dayと推定)

妊婦 31.2 (アクリナトリン摂取量は0.004992 mg/kg 体重/dayと推定)

高齢者(65 歳以上) 49.7 (アクリナトリン摂取量は0.007952 mg/kg 体重/dayと推定)

2 短期暴露評価

各食品の短期推定摂取量(ESTI)を算出したところ、国民全体(1 歳以上)及び幼小児(1~6 歳)のそれぞれにおける摂取量は急性参照用量(ARfD)を超えていない。注)基準値案、作物残留試験における最高残留濃度(HR)又は中央値(STMR)を用い、平成 17 ~19 年度の食品摂取頻度・摂取量調査及び平成 22 年度の厚生労働科学研究の結果に基づき ESTI を算出した。

残留農薬の量には「現実的に考えられる最大の量」を設定するものだと思うけど、「又は中央値」を用いるのはなぜだろう。

 

農薬・動物用医薬品部会の報告書(と思われる) https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000210143.pdf

アクリナトリン農薬抄録 - 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)  344〜447ページは白塗りが多くてイマイチわからん

ピレスロイド - Wikipedia

一日摂取許容量 - Wikipedia

【今さら聞けない営農情報】第46回 ARfD:急性参照用量|今さら聞けない営農情報|シリーズ|JAの活動|JAcom 農業協同組合新聞

残留農薬基準値検索システム:アクリナトリンhttps://db.ffcr.or.jp/front/pesticide_detail?id=1700 適用作物でも基準値が書かれていないものがあるのはナゼ?

短期摂取量の推定等について https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000066805.pdf 対象作物が少ないように思う…

短期曝露評価の導入にあたって検討が必要な事項について(どこの資料か不明だが、ARfD設定が随分と緩い印象を受ける)https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kaigi/pdf/data1-1.pdf