yukino_halu’s diary

日常の雑記。

キザロホップエチル

薬登録情報提供システムに載っている「成分」を取り上げてみる。とりあえず飽きるまで。感想なんかは灰色文字で。

キザロホップエチル

フェノキシプロピオン酸系の茎葉処理型選択制除草剤。茎葉処理によって葉面より速やかに吸収された後、特に脂質合成阻害により分裂組織の壊死や生長抑制などを引き起こすことで枯死させるものと考えられている。

f:id:yukino_halu:20211227142947p:plain

フェノキシプロピオン酸の構造を一部に持つ。赤米印(*)部分で光学異性を持ち、ラセミ体(S体R体の混合物)がキザロホップエチル、R体のみがキザロホップPエチル。

ホルモン系除草剤であるフェノキシプロピオン酸系化合物は広葉植物に対してのみ高い活性を示すが、フェニル環の4位にキノキザリニロキシ基(キノキサリニルオキシ基)を導入することで、イネ科雑草に対して顕著な除草活性を示す。この除草活性はほぼ全てのイネ科植物(イネ科作物も含む)に対して認められる一方、非イネ科植物に対しては全くその活性を示さない。

キザロホップエチルをイネ科雑草に茎葉処理した場合、処理後1日以内に展開始めの最も新しい葉の成長が停止し、ついで当該新葉の葉色が淡黄化する。この時に処理個体の成長点を顕微鏡下で観察すると細胞膨化が始まっている。黄化症状はさらに植物全体に広がり、4日目には新葉が、6日目には植物全体が壊死状態となる。既に4日目の段階で分裂組織中の細胞は破壊されており、この時点で植物体の枯死が決定づけられている。

ノビエ(イネ科雑草)の葉面をキザロホップエチルでスポット処理すると、処理後1日で既に被処理部から上方及び下方へ有効成分が移行している。さらに下方へ移行した有効成分は、葉鞘基部にある頂端分裂組織の近傍、及び根部へも到達している。即ち、有効成分の移動の様子と先の顕微鏡観察の結果から、本化合物の標的部位は分裂組織であることが推定された。

細胞構造あるいは細胞膜機能の急激な変化をもたらすことが、第一義的な本剤の作用機作と考えられる。多年生雑草セイバンモロコシを用いて本剤の多年生雑草地下茎に対する影響を見てみると、下方へ移行した薬剤の影響により、茎葉処理後1-3日目には地下茎は再生する能力を失い、次第に壊死状態へと向かう。また、その際壊死症状の現れる部位は地下茎の分裂組織に相当し、地上部と同様に植物体の分裂組織が本剤の標的部位である事が判る。

主に細胞分裂が活発な場所の細胞を殺して、栄養吸収などができないようにして枯らす。基本的に枯死ではなく壊死と書かれていることを考えると、細胞分裂が活発ではない部分でも、代謝機能を撹乱しているんだろう。

イネ科の雑草に対して使用。

マウスやラットでは48時間で大部分が、1週間で70-90%が糞尿として排泄される。

ダイズに散布すると、散布後に成長した範囲にも成分が移行していく。比較的土壌に吸着されやすい。土壌処理すると、植物体への吸収移行はゼロではない。

テンサイ(ビート)に葉面散布した場合、散布後に成長した葉や根には移行しにくい(ゼロではない)。

トマトでは茎葉や果実に移行しやすい。果実から不検出(ゼロではなさそう)になるのは30日を要する。

ラットに経口で連続投与すると、脂肪に蓄積する傾向が見られた(投与終了後7日で消失、残留性は低い)。投与量の約90%が血液に移行する。

 

 

食品安全委員会(2009年)(案) https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_nouyaku_quizalofopethyl_210903.pdf

食品安全委員会(2014年)(案) https://www.env.go.jp/council/10dojo/y104-50/sankousiryou4.pdf

農薬・動物用医薬品部会(案) https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000077549.pdf(具体データ少)

キザロホップエチルの農薬抄録 https://www.acis.famic.go.jp/syouroku/quizalofop-ethyl/index.htm (白塗りあり)