エピジェネティクス 中野徹
高校生の時には生物の授業が好きだったし、自分(人間)も生き物だから興味を持ったのだけど…漠然とした理解が精一杯。精力的に研究されている一分野として成立しているくらいだから、新書で書ける分量を考えれば当然だけど。
以前に見たNHKの「人体」で「遺伝子は常に全てが働いているわけじゃない。環境や成長に伴ってONとOFFで調節されている。だから、遺伝子が全く同じ一卵性双生児でも個性が出る」と言っていた記憶がある。そのONとOFFのメカニズムに関係するのがエピジェネティクス。
遺伝子制御の方法として解明されている、化学的なものとしては大きく分けて2つ。
・DNAのメチル化(4塩基のうち、シトシンだけがメチル化を受ける)
・DNAを巻き取るヒストンを構成するアミノ酸の化学修飾(ヒストンテールという部分において、アセチル化、メチル化(モノ・ジ・トリ)、リン酸化、ユビキチン化などの修飾がある)
DNAのメチル化は、発現を抑制する。
ヒストンの修飾は、修飾される場所や修飾の種類によって、発現を抑制したり促進したりする。
個体の個性や疾患等については、遺伝子発現の促進や抑制によって説明できることが増えている。DNAやヒストンの修飾・修飾除去に関係する酵素は色々と発見されているけれど、その酵素がなぜそのタイミングで働くようになるのか、など、分かっていないこともまだまだ多い。
本書に書かれていた「植物の春花処理」「三毛猫のクローンは模様が同じにならない」について、過去に豆知識・雑学程度にフレーズだけは耳にしていたけれど、エピジェネティクスで説明できることは知らなかった。
本の終わりの方で筆者が「知見が蓄積されれば遺伝子制御の原理原則がわかるかもしれない。だけど研究が進んでも創薬などの成果には繋がらないことも考えられる」とわざわざ悲観的な見方まで書いていて、いかにも研究者だなぁ、誠実だなぁ、と思った。